創立50周年迎えて
~北海道の新たな動きを捉え、北海道全域の持続的な発展を目指す~
2025年 6月
北海道経済連合会
会長 藤井 裕
北海道経済連合会は、昨年12月に創立50周年を迎えました。この節目にあたり、改めて会員の皆さま、関係各位のご支援、ご協力に心より感謝申し上げます。
1974年の設立以来、当会は北海道の経済発展に寄与すべく、調査研究、政策提言、要望活動、プロジェクト推進など多岐にわたる活動を展開してまいりました。50年前の設立趣意書には、「北海道は、戦後一貫して国および地方自治体による総合開発が強力に推進されてきたところであるが、北海道のもつ大きな潜在的発展力を未だ十分に活かすまでにはいたらず、幾多の面において立ち遅れのあることは否めない事実である」と記されています。この認識は、現在でも多くの分野で当てはまります。言い換えれば、北海道は未だ十分に「ポテンシャル」を発揮できておらず、開発の面でも他地域に比べ相対的に遅れているのが実情です。
北海道新幹線は当会設立の前年1973年に「全国新幹線鉄道整備法」に基づき整備計画が決められた路線です。以降、50有余年の歳月を経てなお、札幌開業時期が確定していない状況にあります。
また、北海道は、広大な土地に高次な都市機能が点在する広域分散型社会を形成していますが、高規格道路は、人口10万人以上の中核都市である函館市と北見市が、札幌市と結ばれておらず、整備が遅れています。
2024年に策定された、国の「第9期北海道総合開発計画」では、農業、漁業、観光、再生可能エネルギー等、公益的機能を提供する「生産空間」の維持・発展を掲げており、食料安全保障の強化、観光立国の実現を目指すため、人流・物流の基盤である高規格道路をはじめとした交通インフラの整備、ネットワーク強化が不可欠との考えが示されました。当会としてもその実現に向け、しっかりと取り組んでまいります。
一方、ポテンシャルの発揮という点では、具体的な取り組みが既に進行しつつあり、まさに千載一遇のチャンスを迎えています。
北海道は、冷涼な気候に恵まれ、再生可能エネルギーの賦存量が豊富であるため、GXやDX推進に最適な地域です。昨年6月には、北海道が国家戦略特区として、また、北海道・札幌市が「GX金融・資産運用特区」の対象地域に指定され、GX産業の集積と金融センターの形成が期待されます。さらに、本年4月には次世代半導体製造のRapidus㈱のパイロットラインが稼働を始め、2027年には量産を開始する予定であるとともに、AIの進展に伴い道内各地で大型データセンターの建設・計画が進められているところです。こうしたプロジェクトは、北海道の産業基盤を強化し、経済安全保障にも大いに貢献することが期待されます。
当会は2021年6月、全国よりも10年早く進展する人口減少や広域分散型の社会構造など北海道固有の事情に起因する課題を解決し、北海道のありたい姿の実現を展望する「2050北海道ビジョン」を発表しました。そこでは2030年を一つのマイルストーンとし、北海道全域の持続的発展に向けた目標と取り組み項目を整理しました。現在、本ビジョンに基づき「稼ぐ力の向上」「未来産業の創出」「多くの企業やチャレンジ人材の集積」「脱炭素社会への貢献」などの実現に向け、事業活動に取り組んでいるところです。
具体的には、北海道の基幹産業である食と観光の支援強化による食料安全保障や観光立国の実現に加え、GX・DXの推進や、次世代半導体産業の集積による北海道バレー構想、宇宙開発の六次産業化による宇宙版シリコンバレー構想の実現に向けた取り組みを進めています。また、政府の「地方創生2.0」の基本的な考え方を踏まえ、誰もが安心・便利に移動できる「北海道MaaS」の実現への取り組みなど、企業、地域との共創に注力し、北海道全域が格差なく持続的に発展することを目指してまいります。
これらは、もとより当会だけで成し得るものではありません。官民挙げたオール北海道で皆さまと共に取り組むことにより、明るい新時代を切り拓くことができると確信しています。
結びになりますが、50年前に当会設趣意書に記されました「北海道のもつ大きな潜在的発展力」は、今こそ、その価値を最大限に活かし、わが国そして北海道の課題解決に貢献していくことが必要であり、それが当会の使命です。次に続く50年のさらなる飛躍を目指し、これからも誠心誠意取り組んでまいりますので、今後とも、会員の皆さまならびに関係各位のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
以上